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塾長からの一言

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大学新入生のTOEIC

今春、サミット・ゼミからは4人の生徒さんが大学に進みました。その4人に、英語の資格試験について尋ねてみました。2人はTOEICを受け、1人はTOEFLを受けていました。近年は、入学前後にTOEICを強制受験させる大学が増えてきています。TOEFLは海外に留学する人たちが受けるテストです。TOEICは英語によるコミュニケーションだけではなくビジネス能力を検定する側面があるので、お茶の水女子大はTOEFLにしたのかもしれません。

厳しい大学受験を終えて入学して直ぐに、社会人の英語資格試験であるTOEICを受験するのは新入生にとって大変です。しかし、多くの企業がTOEICスコアを採用や昇進の基準にしているので、新入生がこの試験を受ける意義は小さくありません。英語の資格は就活における重要な条件の一つだからです。

企業が求めるTOEICスコアについて調べてみました。因みに、TOEICは990点満点で、860点以上がAレベル、730点以上がBレベルです。採用条件として、600点以上が大正製薬、大和ハウス工業、ニトリホールディングスなど、650点以上がアサヒビール、シチズンなど、700点以上がNTT東日本、ファーストリテイリング、三菱電機など、730点以上がソフトバンク、武田薬品などでした。昇格・昇進については、住友商事は730点以上が管理職、三菱商事は750点以上が課長クラスの条件になっています。ハイスコアを求める企業もありました。住友不動産や野村不動産は採用条件として800点以上、NTTコミュニケーションズの採用条件は860点以上です。

これまでの私の経験では、東京外国語大学合格レベルのTOEICスコアは700-730点です。ですから企業が求めるTOEICスコアはかなり厳しいと思います。しかし、グローバル化が進展している世の中ですから厳しいのも当然と言えます。

TOEICにはリスニングセクションとリーディングセクションがあり各495点満点です。リーディングセクションは短文穴埋め問題、長文穴埋め問題と文章問題から構成されています。穴埋め問題には文法・語法力が必要で、文章問題には情報処理力が必要です。高校生が大学入試を目指して勉強すれば、結果的にTOEICでかなりの得点が取れると思います。文章問題は共通テストの第1問、第2問によく似ています。

懸念されるのは穴埋め問題です。共通テストは全ての問題が読解問題になり、センター試験第2問で出題されていた文法・語法問題は出題されなくなりました。共通テストでは出題されないからと文法・語法の勉強が甘くなれば、TOEICの穴埋め問題が解けなくなります。文法・語法は語学の勉強の基本ですから、ゼミの授業では、TOEIC受験も念頭に入れて文法・語法をしっかり教えるつもりです。

生成AI

金沢市と富山市で開催されていた主要7カ国(G7)教育相会合が今週月曜日(5/15)に閉幕しました。閣僚宣言では生成AIに対して「学習や指導に好機をもたらすと同時に、教育システムに課題を提示していることを認識する」と明記しました。イギリスのキーガン教育相は「生成AIを使いこなす力を伸ばすような教育と、ネガティブな面をコントロールすることの両方が大事だ」と語ったそうです。

先週の本欄を準備するに当たり、チャットGPTでいろいろ使ってみました。「どうしたら英語が話せるようになりますか」という問いに対しては、基礎的な文法や語彙を学ぶ、聴解力を鍛える、会話の練習をする、英語の環境を作る、自信を持って話すという5つのステップを答えました。完璧です! ゴルフスイングの悩みについての質問には納得できるポイントを助言してくれました。本当に便利だと思いました。

一方、ビックリしたこともありました。坂本龍馬に関する細かな質問をしたところ、龍馬を長州藩の志士と説明しました。龍馬は土佐藩出身ですから明らかな間違いです。チャットGPTを使い始めた日にこのミスを見つけました。チャットGPTは大量のデータを学習しているはずなので、このミスには驚きました。そこで、何故ミスをするのかを尋ねました。学習しているデータに、情報の正確性や完全性に欠けるものが含まれているとミスをする可能性があるという回答でした。

AIはツールとして凄まじい能力を持っています。しかし、完全無欠ではなく、上述のようにミスをすることもあります。そのようなミスに気づけるかどうかは人間にとって非常に重要です。ですから、人間は従来通り然るべき知識を持つ必要があります。最近の教育は知識の蓄積ではなく思考力、表現力を重視する傾向がありますが、AI時代においてはどのレベルの知識が必要とされるでしょうか。今後、私なりに考えてみるつもりです。

こどもの日の社説

先週金曜日(5/5)はこどもの日でした。北國新聞の社説は「AI時代に備える教育を」というタイトルで、こどもの日に向けた内容でした。今年になりチャットGPTを始めとする生成AIが話題に上り、様々に議論されています。AIが社会に大きな影響を及ぼすようになっていますので、社説のタイトルは直ぐに目に留まりました。

この社説では、「生成AIが出したものをうのみにしないように。自分で考えることなしに答えのみを教えてもらう用途には利用すべきではない。」という人工知能学会の指摘が紹介されていました。そして、「生成AIの安易な利用が児童や学生の思考力と文章力の低下を招く懸念は拭えない。」と主張しました。

私自身もチャットGPTを実際に試してみました。AIが瞬時に様々な質問に答えてくれたり、相談に対するアドバイスをくれたりするのは本当に便利だと思いました。しかし、上述の北國新聞社説の懸念は当たっています。生成AIに依存してしまうと思考力や文章力が弱められるのは必然です。そして、これは児童、学生だけに限られず、私たち全員が注意しなければなりません。

チャットGPTに「人間に叶わないところ」を質問しました。直感的な理解力や洞察力は持たず、倫理的な判断や価値判断をすることはできないという回答でした。また、創造的な表現力は人間に及ばないとのことでした。そして、チャットGPTはあくまで自然言語処理に特化したツールであり、人間の能力を補完するものであると述べました。ところで、今の大学入試では思考力、表現力、判断力が問われています。これらの能力を自分のものとすれば、AIの時代を生きる若者は、生成AIを正にツールとして使いこなせるでしょう。

北國新聞の社説は、末尾で「誰もが人とつながる中で自分の役割を見いだし、個性と創造性を発揮できる社会をつくる」ことが「デジタル変革が進む時代の教育にも必要な視点である」と述べました。とても重要な指摘だと思います。

高校入試結果 in 2023

先月18日の石川県教育委員会会議で3/7, 8に実施された公立高校入試の平均点が報告されました。英語50.2点、数学44.4点、国語59.3点、理科50.8点、社会41.9点で5教科合計の平均点は247点でした。過去5年間で3回目の250点割れでした。石川県の公立高校入試は難しいと言われています。調べてみると、過去10年間の平均点の平均は249.0点でした。今年の公立高校入試は例年並みの難しさだったと言えます。

英語は50点割れが4年続いていました。50点を回復したとは言え、難しさは続いています。その原因は会話文、長文とも英文資料やグラフに関する問題で、問題文が長いことです。かなりの英語力がなければ50分で解き終えることはできません。今年は第2問の形式が英単語の並び替え問題に変わりました。文法が得意な生徒にとっては時間の節約になったでしょう。

問題は数学です。過去10年間の平均点は、5年前の51.7点を除いて50点割れが続いていました。そして今年も44.4点でした。今年3/16付け本欄で述べた通り、関数や図形の問題が難しくて受験生は苦戦したようです。対策としては、基礎力を万全にした上で、難しい問題に対する思考力を鍛える必要があります。また、50分総合問題での得点の仕方に慣れることが非常に大切だと思います。

今年驚いたのは社会です。社会は過去3年間50点割れが続いていました。今年の41.9点は去年の39.9点に続く低さでした。改めて問題を見ると、記述式が難しいです。中3生にここまで考えさせるかというような問題が幾つかありました。社会の得点分布がどうなっているか気になります。恐らく正規分布の形ではなく二瘤ラクダのような分布になっているでしょう。社会嫌いな生徒が増えるのではないか心配です。

サミット・ゼミの通常授業は英語、数学と国語200字作文です。今年の入試結果を踏まえて授業を進めます。お任せ下さい!

参考
先々週の本欄で述べました中3生の京都での英会話練習ですが、4名の内1名が実行しました。知らない土地で知らない外国人に話しかけるのはとても勇気が要るので、英会話練習は強制ではありませんでした。実行した彼は、準備していた想定問答集のプリントを忘れていったのに、勇気をだしてイギリス人に話しかけたそうです。素晴らしいと思います。一生忘れられない経験になったかもしれません。