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塾長からの一言

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未来を拓く人材

今月7日から11日までの五日間、日本経済新聞1面に「教育岩盤 突破口を開く」という連載記事が掲載されました。連載記事の最終段落は「(教育界の)変化を嫌う体質を打破しない限り、未来を拓く人材は育たない。まず動くべきは学校であり、それを支える私たちだ。」でした。

連載記事の中からキーセンテンスを以下に列挙してみます。
・日本の教育は、物事に必ず1つの正解があると考え、早く効率的にたどり着くことを重視する「正解主義」を取ってきたが、それではAI時代に通用しない。
・受験競争が激しい東アジアの国・地域は失敗を恐れる生徒の割合が高く、OECD加盟国の中では日本の77%が最高である。
・価値創造をもたらす「良い失敗」の欠如が日本の行き詰まりの根底にある。

1972年の学制発布以降、日本の教育は近代化したものの、社会は激変したのに教育界は抜本改革を避けてきたため未来を拓く人材が育っていないという危機意識からの連載でした。今は、あらゆるモノがインターネットでつながるIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)を用いて製造業が革新している第四次産業革命の時代と言われています。価値を創造する人材、イノベーションを創出する人材が求められています。

連載最終回の「優等生は育っても、とがった才能を輩出できない」という指摘が印象に残りました。学校ではありませんが、中高生と接している私に何ができるのかを考えました。覚えるべきものは覚え、考えるべき時は考える(知識を蓄積し思考力を磨く)という基本は変わりません。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊教授の指摘の通り、これが創造性の前提だからです。

未来を拓くとがった才能を伸ばすには、自由にものが言える雰囲気作りと教える側からの情報提供が必要なのではないかと考えます。第四次産業革命に関する世の中の動きを紹介し、のんびりしていたら日本は先進国から脱落してしまうという問題提起をすれば、自分が何とかしてやろうというような生徒が出てくるでしょう。

生徒全員がとがった才能を持つ必要はありません。その可能性を持った生徒さんと出会った時は、その才能を伸ばせるような刺激を与えたいと思っています。

どこまで教えるか

先週の本欄では日本経済新聞スポーツ面に連載されている「悠々球論」をご紹介しました。このコラムを担当されている野球評論家である権藤博さんの人間観察力に惹かれ、毎回興味深く読んでいます。先週の本欄を書くにあたり権藤さんについてインターネットでいろいろ調べてみました。すると、これまた興味深い話を見つけました。

私は知りませんでしたが、権藤さんはアメリカ・フロリダ教育リーグでコーチの修行をされたそうです。日本のプロ野球でコーチや監督を務める前にしっかり勉強されていたことに感銘を受けました。そして、その修行時代の経験から、選手を大人扱いする”Don’t over teach”という主義を貫いたそうです。

この「教え過ぎない」という主義に思わず膝を打ちました。一人一人の選手の個性を尊重して、選手の自主性を引き出すためにover teachしなかったのだと思います。私も同じようなやり方をしているので、親近感を覚えました。

数学ではあまり教えません。各分野のポイントはしっかり教えて、プリントでの問題練習の時は生徒の皆さんの解答に丸付けをするだけです。間違った時は、もう一度考えてもらいます。必要に応じてヒントを出しますが、答えは教えません。生徒の皆さんにしっかり考えて欲しいからです。安易に教えることは彼らの思考力を伸ばすことにはならないと信じています。ヒントの出し方は生徒さんによって異なります。どこまで教えるかは難しい判断です。

英語の授業のやり方は数学とは全く違います。各分野のポイントを説明した上で問題練習をして答え合わせをするやり方で、6名までの生徒さん全体を引き上げます。以上の数学と英語の授業のやり方は中学クラスのもので、高校クラスの授業のやり方はそれぞれ異なります。

人の痛みを知る

日本経済新聞のスポーツ面に「悠々球論」というコラムがあり、野球評論家の権藤博さんが担当されています。権藤さんはプロ野球中日で活躍し、引退後は中日、近鉄、ダイエーで投手コーチをされ、最後は横浜の監督をされました。「悠々球論」はおそらく2週間毎の掲載ですが、人間観察力に長けている権藤さんのコラムは毎回興味深いです。

先週木曜日(8/10)の同欄のタイトルは「人の痛み知る監督の采配」で、広島の新井貴浩監督に関する文章でした。新井監督は試合状況のいい時も悪い時も、ベンチで穏やかな笑みを浮かべているそうです。もう君たちに任せた、といわんばかりの悟った笑顔がいいと述べています。新井監督自身が現役時代にとても苦労したので、それが選手への「ダメもとでいいんだよ」という思いやりになって表れていると分析されています。

「人の痛み知る」という言葉にハッとしました。中高生の皆さんに安心感を与えるため明るくどっしりと構えているつもりですが、痛みを知るレベルにまで至っているのであろうか… 権藤さんのコラムは私の心構えに良い刺激を与えてくれました。新井監督の穏やかな笑みを参考にしたいと思います。

高校生の皆さんとは全国模試が戻ってきた時に30分の時間を取って個別に面談しています。もうすぐ7月の模試結果について皆さんと面談しますから、人の痛みを知るというポイントは忘れないようにしたいと思っています。彼らの意見、気持ちを十分尊重するつもりです。ただし、本年6月22日の本欄「どこまで言うか」で述べた通り、生徒の皆さんの目標を実現させるためには強く言わなければならないこともあります。この辺りのバランスが非常に難しいです。

1次関数・解法パターン

中3クラスの夏期講習は順調に進んでいます。3週間前の本欄でご紹介した通り、数学は方程式応用問題、1次関数と三角形の合同の証明の3つに特化して問題プリントを何枚もこなしてきました。1次関数の問題を解き終わった時には、解法パターンをホワイトボードに書いて説明し、生徒の皆さんにはノートに書き写してもらいました。

1次関数は3つの分野の中では最も配点が大きいので、特に重要な分野です。様々な問題がありますが、幾つかの解法パターンがあります。授業では6つの解法パターンを説明しました。プリントにあった問題を使って説明したのでパターンをしっかり理解してくれたと思います。ある問題では、6つのパターンの内の2つのパターンを使って解きました。目の付け所を説明した上で解く手順を説明しました。

このような教え方の背景には私自身の経験があります。高校時代に「解法のテクニック」(矢野健太郎著)という参考書を使っていました。数学が好きな高校生に人気があった参考書です。因みに、私は、数学が好きで理数科に入りました。(高3になる時に転校して文系に替わりました。) その本を勉強して様々な解法パターンを身に付けました。私にとって忘れられない参考書です。

数学の問題を解く際の目の付け所のパターンを数多く習得するという勉強の仕方は高校の数学につながります。生徒の皆さんが高校に進み、チャート式やフォーカスゴールドのような参考書を使って勉強する時に、中3の夏期講習で1次関数の解法パターンをノートに書いたなぁ~と思い出すのではないかと思います。

夏期講習の数学は宿題形式で問題練習を行ったので非常に順調に進行しました。夏期講習終盤の50分総合問題練習の回数を予定より増やせそうです。総合問題練習の回数を増やせば、生徒の皆さんの経験値が上がります。経験値が上がればテストで失敗する確率が小さくなります。3回の予定を4回に増やして模試過去問に挑戦した上で、今月末の模試、学校の実力テストに臨みます。

「チャットGPT、塾で活用」

今回のタイトルは今週の日曜日(7/30)の日本経済新聞7面に掲載された記事の大見出しです。教育各社で生成AI「チャットGPT」を導入する動きが広がっていることを紹介する内容でした。学習塾を運営する者として興味深い記事でした。

この分野で先行する塾では、生徒の英作文をチャットGPTが添削します。チャットGPTは、文法やスペルの間違いを指摘し、文脈に合わない表現の修正案を示します。しかし、難しい単語を使ったり、細か過ぎる解説をしてしまったりすることもあり、添削内容を講師が確認しているそうです。とても便利だけれども、生徒一人一人に合わせた対応に課題がありそうです。

専門家は、暗記や計算などの単純な学習の指導はAIに代替されるだろうと語っています。日経新聞の記事は、教育各社は生徒のやる気を引き出すコーチングサービスなど、AIに代替されない分野に力を入れ、生き残りを図ろうとしている、と結んでいます。

世の中の仕事のかなりの部分がAIに取って代わられると言われています。野村総合研究所と英国オックスフォード大学の共同研究によれば、日本の労働人口の約49%がAIに代替可能と試算されています。AI化によって消える職業は、一般事務、スーパー・コンビニ店員、銀行員、警備員のような単純作業です。一方、医療、法律、コンサルティングのような創造性や独創性が必要な仕事はAIには代替されないと言われています。

教師や保育士のような人とのコミュニケーションが基本となる職業もAIによっては消えない職業とされています。しかし、日経新聞の記事のように、単純な学習指導はAIが勝っているので、生徒へのコーチングサービスが鍵になります。結局は、生徒とのコミュニケーションが重要で、彼らのやる気を引き出すことが求められるでしょう。

私は、英語や数学の授業の分かり易さの追求は当然のことで、生徒の皆さんのやる気の炎を灯すことが非常に重要だと考えています。勉強の大切さ、目標を持つことの大切さ、頑張ることの大切さを彼らとのコミュニケーションを通して伝えていくつもりです。私自身の体験や先輩生徒の実例を話したり、経済・社会の出来事を説明したりすれば生徒の皆さんの意識は高まります。一番のポイントは彼らとの対話です。様々な要素を考慮し、一人一人に相応しい雰囲気の中で対話することは、鉄腕アトムでもない限りAIには不可能です。