女性「Uターンない」 - サミット・ゼミ | 少人数制の学習塾

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女性「Uターンない」

4年前の2020年3月12日付け本欄「挑戦そして感動」で、センター試験(今の共通テスト)で失敗してD判定(合格可能性35%)という厳しい判定がついたものの金沢大学に逆転合格を果たしたAさんをご紹介しました。受験前にトラや白くまに追いかけられて食べられてしまう夢を見ていたAさんの頑張りのことを考えると今でも涙が出てきます。そのAさんは先月大学を卒業し、今月から東京のある大企業で働き始めました。

Aさんの東京での就職に関して気になるデータがあります。昨年12月1日に日本経済新聞の北陸経済面に掲載された記事で、北陸経済連合会が行った女性の就業意識に関する調査結果です。首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)で働く北陸出身の女性169人の63%が「北陸に戻ることはない」と考えているそうです。この数値は3年前の調査から14ポイント増えました。その理由として首都圏の魅力が多く挙げられたと同時に、「地元は閉鎖的」や「やりたい仕事が北陸にはなかった」などの北陸に対する消極的な評価があったそうです。

これは女性に関するデータであり、もし男性に対して同じ調査をしたなら「北陸に戻ることはない」と考えている人の割合はさらに大きくなると思います。私の教え子で首都圏の大学に進学した男子はほとんど石川には戻っていません。

この状況に対する考え方はいろいろあると思います。世の中はそんなものだと考える人もいるでしょうが、私は、地方創生の観点から真剣に検討すべき課題だと考えます。今から約150年前の明治維新では、日本が欧米諸国に追い付くために中央集権を進めなければなりませんでした。地方は東京に対する人材の供給基地として機能していました。しかし、今は時代が全く異なります。ICT(情報通信技術)の時代ですから東京に集中する必要はありません。

首都圏、名古屋圏、関西圏の大学に進学して視野を広めた人材が石川に戻って活躍すれば、地元がより元気になると強く思います。インターネットで調べてみると、石川県はUIターンを促進する取り組みを行っていますが、腰を据えて実施しているとは思えません。大都市圏の大学に進学した私の教え子達が就職活動をしている時、ごく一部の例外を除いて、彼らの就職希望先に石川の企業は入っていませんでした。県の取組みが就活生に届いていないのです。これで良いのでしょうか。

因みに、Aさんは石川の会社の内定を辞退して東京の会社に就職しました。とても頑張り屋さんなので地元に残って欲しかったです。東京でキャリアを積んだ上で石川にUターンするというシナリオは、残念ながら期待薄です。