塾長からの一言 - サミット・ゼミ | 少人数制の学習塾 - Page 3

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塾長からの一言

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関係代名詞のメモ

中3生は学校の英語の授業で、中学英語の中で最も難しい関係代名詞を学ぶ単元に入っています。関係代名詞が理解できなければ高校英語は分かりません。それほど重要な文法分野です。先日の中3クラスではこの関係代名詞を説明しました。サミット・ゼミでは先取り学習はしないで、中学生の皆さんが教科書で新しい文法を学ぶタイミングで各分野を説明します。

手元にA4用紙1/4サイズの小さなメモがあります。関係代名詞のポイントをまとめたものです。これ以上分かり易い説明の仕方はないという自慢のメモです。十数年以上前に、ポイントをまとめておこうと思ってメモを作りました。最初のメモの作成以降、毎年中3クラスで関係代名詞を説明する度に、分かり易さの度合いが増しました。メモの内容強化が数年続いて、10年前位に現在のメモになりました。当時は、あれっ、去年より良い説明になっていると思ったものです。

先ずは、メモの内容をホワイトボードで説明した後、教科書の基本文を使って具体的に解説しました。その次の授業では、教室でいつも使っている文法の参考書で関係代名詞を説明して問題練習をしました。さらにその上で、もう一度問題練習をしました。問題練習の後は丁寧に答え合わせをしましたから、中3の皆さんはかなり理解してくれるようになりました。

今月後半に各中学で2学期期末テストが予定されています。関係代名詞はその試験範囲に入ります。今後の中3クラスでは、教科書の試験範囲を復習した上で問題練習をします。万全の準備をして期末テストに臨みます。

25年間の進学実績

先週開校25周年を迎えたのを機にこれまでの進学実績をまとめてみました。大学は実際に進学した学校で、進学しなかった合格私立大学や浪人後の進学大学は含まれていません。

大学
京都大 1名、大阪大 2名、名古屋大 1名、東北大 2名、東京工業大 1名、神戸大 2名 (いわゆる難関10大学 9名)、東京外国語大 4名、お茶の水女子大 2名、大阪公立大 1名、千葉大 1名、金沢大 9名、新潟大 6名、信州大 1名、富山大 6名、早稲田大 4名、東京理科大 3名、青山学院大 1名、立教大 1名、法政大 3名、津田塾大 2名、立命館大 2名、関西大 1名、関西学院大 1名他

高校
泉丘 40名、二水 23名、桜丘 12、錦丘 9名、金沢大附属 3名、羽咋 19名、七尾 3名他

一クラス6名までの少人数制で、一時の例外を除いて私一人で教えてきましたから、上記の進学実績を振り返ると感慨深いものがあります。この中のかなりの数の教え子たちと連絡を取り合い、食事をしたりお酒を飲んだりしています。彼らの成長は大きな楽しみであります。私の経験、知識、技能を活用して彼らをサポートしています。そのために経済、社会、科学などの世の中の動きに対するアンテナを高くしておくつもりです。

立派な教え子がたくさんいますから、彼らとのコミュニケーションを通して現在ゼミに通ってくれている中高生の皆さんの参考になることを検討したいと考えています。

おかげさま25周年です

本日(10/17)、おかげさまでサミット・ゼミは開校25周年を迎えることができました。長い間ご支持頂きまして誠にありがとうございます。25年は四半世紀です。「四半世紀」という言葉はグッと胸に迫るものがあります。

25年前の1998年10月17日に羽咋で開校しました。直ぐに金沢との2教室体制になりましたが、金沢と羽咋の頻繁な往復に体が持たず、金沢教室だけになりました。この間、一時的に金沢大学の学生に羽咋教室の授業をお願いしたことがあります。これまでに教室に通ってくれた生徒さんの数は、羽咋で93人、金沢で294人になります。6名までの少人数制を貫いていますから、本当に多くの生徒さん、ご父兄の方々に信頼して頂きました。感謝の言葉しかありません。

25年前に中1だった健太郎君と亮太君は今年38歳になり、それぞれ高校の先生、SE(システムエンジニア)として活躍しています。彼らをはじめ数多くの教え子が大学生、社会人になりました。LINEでつながっている人たちもたくさんいます。彼らと金沢や東京でランチしたり飲んだりする交流はこの上なく楽しいです。私自身は決してサラリーマンとして成功したわけではありません。上手くいったこと、そうではなかったことの経験は教え子たちの参考になると思っています。

学校の先生と私の大きな違いはビジネス経験です。大学卒業後に就職した日産自動車で社会人として一人前になり、その後転職もしました。結果的に、法務、輸出マーケティング、輸入マーケティング、経営企画などの仕事を経験しました。中高生の皆さんはビジネスの経験談を興味深く聞いてくれます。ビジネス経験を基にして何故勉強することが必要かを話せば、彼らは納得してくれます。日産自動車・法規部時代に出会った著名な顧問弁護士の先生に、かなりの回り道をした上で天職に巡り合えたね、と言われました。

大学時代、ある友人は「大谷は先生に向いている。」と言いました。鋭い指摘でした。別の友人は「短気がお節介を着て歩いている。」と言いました。お節介は面倒見の良さにつながっていると思います。短気については、結構我慢していますが、今も課題の一つです。生徒の皆さんが安心して頼ってくれるように悠然と構えるように心掛けています。

高校入試、大学入試に向けて、そして社会人として生徒の皆さんが伸びていく姿は感動的です。彼らをサポートすることが自分の人生の責務だと考えています。これからも頑張ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

偏差値を上げることは難しくない

今月末に高1生・高2生は進研模試を受けます。進研模試は受験者が40万人を超える全国模試です。自分の成績が全国レベルで分かるので、どの大学に合格できる水準にあるかを知ることができます。とても貴重な情報です。

先月初めに高2クラスの2名と7月の進研模試結果について個別に面談しました。2名とも志望校の合否判定は良くありませんでした。しかし、今の成績を前提として志望大学を変える必要は全くありません。それをすれば志望大学のレベルがだんだん下がっていく可能性があります。そうではなく、どうすれば自分の成績を志望校合格のレベルまで上げられるかを検討すべきです。

先月の面談では、志望校レベルに達するためにはあと何点取れば良いかについて具体的に話しました。例えば、金沢大学の場合、学部にもよりますが、進研模試で偏差値60がボーダーラインです。7月の進研模試の英語は全国平均点が31.9点(100点満点)でした。仮に英語が平均点(偏差値50)だったとすれば、偏差値を60にするためには約17点上げる必要があります。

70点を87点にすることは厳しいですが、32点を49点にすることはそれほど難しいことではありません。基礎をしっかり固めれば十分可能です。高2クラスの2名に、英語や数学で志望校レベルまで何点が必要かを話したところ意外そうな表情を浮かべました。進研模試結果には各科目の分野別得点が示されています。分野ごとに上積み可能な点数を指摘したところ、十分可能だと納得してくれました。

英語の解説がない!

今週日曜日(10/1)の日本経済新聞のコラム「春秋」は、観光地における訪日外国人に対する情報提供の不十分さを取り上げていました。広島から厳島神社のある宮島へ船で向かう訪日外国人が多いものの、途中で見る島々の歴史についての英語の解説がないので、彼らはスマホを眺めたり寝込んだりしていたそうです。「なぜここでひとこと解説がないのか」と惜しく感じる観光地は全国に多いと指摘していました。

丁度一週間前に、全く同じことを感じました。9/24(日)に高2の姪と兼六園を散策しました。成巽閣の前を通った時、姪が関心を示したので入ってみました。成巽閣の存在自体は知っていましたが、入ったのは初めてでした。加賀藩13代藩主・前田斉泰が母堂の隠居所として建てた歴史的建造物で、1階は書院造、2階は数寄屋造になっており、諸道具、衣装、書画、人形が展示されていました。加賀藩の文化として興味深かったです。

成巽閣にも訪日外国人がたくさん訪れていて驚きました。建物内の幾つかのポイントで、ボタンを押せば部屋や展示品の説明が音声で流れました。しかし、それらは全て日本語に限られていました。英語のパンフレットは準備されていましたが、英語の音声があれば、せっかく訪れた外国の人たちの満足感は大きくなると思いました。帰り際に料金所の係員に英語のアナウンスについて聞いたところ、その予定はないとのことでした。(自宅に戻って調べると、成巽閣のホームページは英語にも対応していました。)

訪日外国人が東京、京都だけではなく日本各地を訪れて歴史や文化に触れることは大変素晴らしいことです。「なぜここでひとこと解説がないのか」という状況は是非改善すべきです。インバウンドによる経済効果も良いのですが、外国の方に日本をもっと知ってもらうことは非常に重要だと思います。大袈裟に言えば、相互理解は国際平和につながります。街中に住んでいる私にできることは、道に迷っている外国人を助けることくらいかなぁ~

私立高校の使命

一昨日(9/26)、金沢高校の来年度入試説明会に行ってきました。私立高校は学習塾を対象に入試説明会を開催してくれます。私は毎年、星稜高校と金沢高校の説明会に出席しています。星稜高校の説明会は先々週に開かれました。

説明会では来年度入試の内容だけではなく、教育の特徴や今年度入試の結果について聞くことができます。学習塾にとって貴重な情報を得られます。当然のことながら両校とも自校の教育をアピールするのですが、説得力に欠けていると思わざるを得ません。それは、大学合格実績が素晴らしいとは言えないからです。

星稜高校の今年の金沢大学、難関大学(旧七帝大・東京工業大・一橋大・神戸大)合格者はそれぞれ18名、6名でした。同校の過去10年平均は、それぞれ22.4名、8.8名です。金沢高校の今年の合格者はそれぞれ8名、2名で、過去10年平均とほぼ同じでした。因みに、桜丘高校の今年の実績は、それぞれ64名、15名です。

大都会では中学生の進学先として公立高校より私立高校が選ばれる傾向が強いのですが、当地では状況が異なります。公立高校入試で残念な結果になった生徒が私立高校に入学します。15才の春に公立高校に不合格になれば精神的なショックは計り知れないほど大きいと想像できます。それらの生徒には大学入試でリベンジして欲しいと思います。

星稜高校や金沢高校には泉丘、二水、桜丘に不合格になった生徒が通います。高校入試での失敗をバネにして大学入試でリベンジできるようにそれらの生徒を導くことが両校の使命だと考えます。私の手元には過去20年間のデータがあります。星稜高校は2007年、金沢大学合格者が44名で過去20年間で最多でした。同年の難関大学合格者は20名でした。同じ年の桜丘は、金沢大学57名、難関大学6名でした。是非このレベルを目指して欲しいです。

究極の一言

今月の高2クラスで「大学受験の心構え」というオリジナル資料を配りました。7月の全国模試の結果に基づき個別に面談して志望校について具体的に話しました。大学受験を具体的に意識してもらうために、毎年、この時期にそのプリントを配ります。ある受験雑誌の抜粋と私自身の経験をまとめた資料です。その抜粋の中には、受験生のモチベーションを高める究極の一言が含まれています。

「大学受験の心構え」を配った高2クラスの後、高3クラスで、そのプリントの内容を覚えているか聞いてみました。高3の皆さんは、内容はぼんやりと覚えていたものの、上述の究極の一言は忘れていました。その一言が載っている受験雑誌のページを開き、コピーを取って教室の出口に掲示しようかと提案したところ賛同を得ました。

そういう次第で、先週から受験雑誌のそのページのコピーを玄関の横の目に入り易い個所に掲示しました。究極の一言には赤マジックで下線を引きました。非常にインパクトのある言葉なので、高校生の皆さんのやる気に直結しているはずです。また、中学生の皆さんの目にも入りますから、良い刺激になっていることでしょう。

この言葉の紹介はここでは控えさせて頂きます。気になる方はどうぞ当ゼミをご利用下さい!

速読練習の成果は? その2

本年7/13付け本欄で述べた通り、今年度の中3クラスでは英文の速読練習を2月から始め、7/2の石川県総合模試での英語はまあまあの成績でした。夏期講習では文法の既習分野を総復習した上で、8/11に模試過去問を使って速読練習をしました。中3生諸君は私の想像以上に速く問題を解き終えたことを覚えています。かなり速読に慣れたようでした。そして、夏期講習終盤では模試過去問を3回解いて、8/27の模試と学校の実力テストに備えました。

先週8/27模試の結果が届きました。受験者全体の英語の平均点は44.6点で難しいテストでした。中3クラス4名の内、速読に慣れた3名の平均点は85点でした。この点数の科目別偏差値は70で、素晴らしい成績でした。2月から積み重ねてきた速読練習の成果が出たと思います。昨年度までとは異なる新たな試みが上手くいきました。とても嬉しかったです。

英語は実力がつけば成績がバラつくことはありません。数学の場合、実力があってもちょっとしたミスで大失敗することがあります。ですから、英語が得意になれば入試に強くなります。英語が得意になるためには然るべき努力が必要ですが、その努力は必ず報われます。

中3生の速読の基礎は文法です。文法の勉強をしっかりすれば英文を速く読むことができるようになるのです。例えば、不定詞を使った英文では名詞的用法、副詞的用法か形容詞的用法かを判別する必要があります。中学生にとって易しくはありません。しかし、それぞれの用法をしっかり理解して数多くの英文で不定詞を見る経験を積めば、どの用法かは直ちに判別できるようになります。

8/27模試で英語が伸びなかった生徒さんもいました。文法の甘さが主な原因だと考えていますが、他の要因があるかもしれないので分析するつもりです。

国際人に必要な対話力

先週ご紹介した日本経済新聞の連載記事が終了した後、関連するインタビュー記事が何回か掲載されました。その中の一つにグローバル人材の育成に関するものがありました。昭和女子大キャリアカレッジ学院長の熊平美香さんへのインタビュー記事でした。熊平さんは国際化教育に詳しいそうです。

そのインタビュー記事の見出しは「国際人 必要なのは対話力」でした。多様な人と対話できる力を子どもに見につけさせることが必要、人の意見に賛成か反対かちゃんと表明でき、話し合いで対立を解決する力を育む、知識を身につけるだけでなく英語を使えるようになることが大切、これから求められる英語力は人間関係をつくる力、というような興味深い指摘がありました。

日本国内でも人とのコミュニケーションにおいて対話力が必要です。さらに世界で活躍するには英語で多様な人と上手くコミュニケーションを取らなければなりません。しかし、どこでどのように対話力をつけるかは大きな課題です。学校で対話力を育成することは難しいかもしれません。今の学校教育の課題の一つでしょう。

熊平さんは、知識を身につけるだけではなく英語を使えるようになることが大切だとも指摘しました。私自身の国際ビジネス経験からも、まさにその通りです。ゼミの英語の授業は直接的には大学受験や高校受験を目的としていますが、私は生徒の皆さんが将来、英語でコミュニケーションを取るということも想定しています。単語の発音・アクセント、イントネーションに気をつけていることが具体例です。

入試に強く、社会に出てからも役にたつ英語がサミット・ゼミの最大の強みであると自負しています。これからもますます磨きをかけるつもりです。上述した対話力についても学習塾という限られた環境の中でできるだけの努力をするつもりです。テスト結果や模試結果に対する個別面談の場が1つの機会であると考えています。

未来を拓く人材

今月7日から11日までの五日間、日本経済新聞1面に「教育岩盤 突破口を開く」という連載記事が掲載されました。連載記事の最終段落は「(教育界の)変化を嫌う体質を打破しない限り、未来を拓く人材は育たない。まず動くべきは学校であり、それを支える私たちだ。」でした。

連載記事の中からキーセンテンスを以下に列挙してみます。
・日本の教育は、物事に必ず1つの正解があると考え、早く効率的にたどり着くことを重視する「正解主義」を取ってきたが、それではAI時代に通用しない。
・受験競争が激しい東アジアの国・地域は失敗を恐れる生徒の割合が高く、OECD加盟国の中では日本の77%が最高である。
・価値創造をもたらす「良い失敗」の欠如が日本の行き詰まりの根底にある。

1972年の学制発布以降、日本の教育は近代化したものの、社会は激変したのに教育界は抜本改革を避けてきたため未来を拓く人材が育っていないという危機意識からの連載でした。今は、あらゆるモノがインターネットでつながるIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)を用いて製造業が革新している第四次産業革命の時代と言われています。価値を創造する人材、イノベーションを創出する人材が求められています。

連載最終回の「優等生は育っても、とがった才能を輩出できない」という指摘が印象に残りました。学校ではありませんが、中高生と接している私に何ができるのかを考えました。覚えるべきものは覚え、考えるべき時は考える(知識を蓄積し思考力を磨く)という基本は変わりません。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊教授の指摘の通り、これが創造性の前提だからです。

未来を拓くとがった才能を伸ばすには、自由にものが言える雰囲気作りと教える側からの情報提供が必要なのではないかと考えます。第四次産業革命に関する世の中の動きを紹介し、のんびりしていたら日本は先進国から脱落してしまうという問題提起をすれば、自分が何とかしてやろうというような生徒が出てくるでしょう。

生徒全員がとがった才能を持つ必要はありません。その可能性を持った生徒さんと出会った時は、その才能を伸ばせるような刺激を与えたいと思っています。

どこまで教えるか

先週の本欄では日本経済新聞スポーツ面に連載されている「悠々球論」をご紹介しました。このコラムを担当されている野球評論家である権藤博さんの人間観察力に惹かれ、毎回興味深く読んでいます。先週の本欄を書くにあたり権藤さんについてインターネットでいろいろ調べてみました。すると、これまた興味深い話を見つけました。

私は知りませんでしたが、権藤さんはアメリカ・フロリダ教育リーグでコーチの修行をされたそうです。日本のプロ野球でコーチや監督を務める前にしっかり勉強されていたことに感銘を受けました。そして、その修行時代の経験から、選手を大人扱いする”Don’t over teach”という主義を貫いたそうです。

この「教え過ぎない」という主義に思わず膝を打ちました。一人一人の選手の個性を尊重して、選手の自主性を引き出すためにover teachしなかったのだと思います。私も同じようなやり方をしているので、親近感を覚えました。

数学ではあまり教えません。各分野のポイントはしっかり教えて、プリントでの問題練習の時は生徒の皆さんの解答に丸付けをするだけです。間違った時は、もう一度考えてもらいます。必要に応じてヒントを出しますが、答えは教えません。生徒の皆さんにしっかり考えて欲しいからです。安易に教えることは彼らの思考力を伸ばすことにはならないと信じています。ヒントの出し方は生徒さんによって異なります。どこまで教えるかは難しい判断です。

英語の授業のやり方は数学とは全く違います。各分野のポイントを説明した上で問題練習をして答え合わせをするやり方で、6名までの生徒さん全体を引き上げます。以上の数学と英語の授業のやり方は中学クラスのもので、高校クラスの授業のやり方はそれぞれ異なります。

人の痛みを知る

日本経済新聞のスポーツ面に「悠々球論」というコラムがあり、野球評論家の権藤博さんが担当されています。権藤さんはプロ野球中日で活躍し、引退後は中日、近鉄、ダイエーで投手コーチをされ、最後は横浜の監督をされました。「悠々球論」はおそらく2週間毎の掲載ですが、人間観察力に長けている権藤さんのコラムは毎回興味深いです。

先週木曜日(8/10)の同欄のタイトルは「人の痛み知る監督の采配」で、広島の新井貴浩監督に関する文章でした。新井監督は試合状況のいい時も悪い時も、ベンチで穏やかな笑みを浮かべているそうです。もう君たちに任せた、といわんばかりの悟った笑顔がいいと述べています。新井監督自身が現役時代にとても苦労したので、それが選手への「ダメもとでいいんだよ」という思いやりになって表れていると分析されています。

「人の痛み知る」という言葉にハッとしました。中高生の皆さんに安心感を与えるため明るくどっしりと構えているつもりですが、痛みを知るレベルにまで至っているのであろうか… 権藤さんのコラムは私の心構えに良い刺激を与えてくれました。新井監督の穏やかな笑みを参考にしたいと思います。

高校生の皆さんとは全国模試が戻ってきた時に30分の時間を取って個別に面談しています。もうすぐ7月の模試結果について皆さんと面談しますから、人の痛みを知るというポイントは忘れないようにしたいと思っています。彼らの意見、気持ちを十分尊重するつもりです。ただし、本年6月22日の本欄「どこまで言うか」で述べた通り、生徒の皆さんの目標を実現させるためには強く言わなければならないこともあります。この辺りのバランスが非常に難しいです。

1次関数・解法パターン

中3クラスの夏期講習は順調に進んでいます。3週間前の本欄でご紹介した通り、数学は方程式応用問題、1次関数と三角形の合同の証明の3つに特化して問題プリントを何枚もこなしてきました。1次関数の問題を解き終わった時には、解法パターンをホワイトボードに書いて説明し、生徒の皆さんにはノートに書き写してもらいました。

1次関数は3つの分野の中では最も配点が大きいので、特に重要な分野です。様々な問題がありますが、幾つかの解法パターンがあります。授業では6つの解法パターンを説明しました。プリントにあった問題を使って説明したのでパターンをしっかり理解してくれたと思います。ある問題では、6つのパターンの内の2つのパターンを使って解きました。目の付け所を説明した上で解く手順を説明しました。

このような教え方の背景には私自身の経験があります。高校時代に「解法のテクニック」(矢野健太郎著)という参考書を使っていました。数学が好きな高校生に人気があった参考書です。因みに、私は、数学が好きで理数科に入りました。(高3になる時に転校して文系に替わりました。) その本を勉強して様々な解法パターンを身に付けました。私にとって忘れられない参考書です。

数学の問題を解く際の目の付け所のパターンを数多く習得するという勉強の仕方は高校の数学につながります。生徒の皆さんが高校に進み、チャート式やフォーカスゴールドのような参考書を使って勉強する時に、中3の夏期講習で1次関数の解法パターンをノートに書いたなぁ~と思い出すのではないかと思います。

夏期講習の数学は宿題形式で問題練習を行ったので非常に順調に進行しました。夏期講習終盤の50分総合問題練習の回数を予定より増やせそうです。総合問題練習の回数を増やせば、生徒の皆さんの経験値が上がります。経験値が上がればテストで失敗する確率が小さくなります。3回の予定を4回に増やして模試過去問に挑戦した上で、今月末の模試、学校の実力テストに臨みます。

「チャットGPT、塾で活用」

今回のタイトルは今週の日曜日(7/30)の日本経済新聞7面に掲載された記事の大見出しです。教育各社で生成AI「チャットGPT」を導入する動きが広がっていることを紹介する内容でした。学習塾を運営する者として興味深い記事でした。

この分野で先行する塾では、生徒の英作文をチャットGPTが添削します。チャットGPTは、文法やスペルの間違いを指摘し、文脈に合わない表現の修正案を示します。しかし、難しい単語を使ったり、細か過ぎる解説をしてしまったりすることもあり、添削内容を講師が確認しているそうです。とても便利だけれども、生徒一人一人に合わせた対応に課題がありそうです。

専門家は、暗記や計算などの単純な学習の指導はAIに代替されるだろうと語っています。日経新聞の記事は、教育各社は生徒のやる気を引き出すコーチングサービスなど、AIに代替されない分野に力を入れ、生き残りを図ろうとしている、と結んでいます。

世の中の仕事のかなりの部分がAIに取って代わられると言われています。野村総合研究所と英国オックスフォード大学の共同研究によれば、日本の労働人口の約49%がAIに代替可能と試算されています。AI化によって消える職業は、一般事務、スーパー・コンビニ店員、銀行員、警備員のような単純作業です。一方、医療、法律、コンサルティングのような創造性や独創性が必要な仕事はAIには代替されないと言われています。

教師や保育士のような人とのコミュニケーションが基本となる職業もAIによっては消えない職業とされています。しかし、日経新聞の記事のように、単純な学習指導はAIが勝っているので、生徒へのコーチングサービスが鍵になります。結局は、生徒とのコミュニケーションが重要で、彼らのやる気を引き出すことが求められるでしょう。

私は、英語や数学の授業の分かり易さの追求は当然のことで、生徒の皆さんのやる気の炎を灯すことが非常に重要だと考えています。勉強の大切さ、目標を持つことの大切さ、頑張ることの大切さを彼らとのコミュニケーションを通して伝えていくつもりです。私自身の体験や先輩生徒の実例を話したり、経済・社会の出来事を説明したりすれば生徒の皆さんの意識は高まります。一番のポイントは彼らとの対話です。様々な要素を考慮し、一人一人に相応しい雰囲気の中で対話することは、鉄腕アトムでもない限りAIには不可能です。

夏期講習・社会

先週の本欄でご紹介したように中3クラスは先週末から夏期講習に入りました。理科・社会は各10回の授業で1, 2年分野を総復習します。社会は既に授業を2回終えました。

毎年の社会の授業で注意しているのは世界人口です。世界の人口は増え続け、国別順位が変わることがあるからです。授業を始めるに当たり、今月初めに世界人口を調べてみました。(データは国連人口基金) 今年半ばにはインドが中国の人口を抜くという報道の通り、インドは14億2,860万人で中国の14億2,570万人を抜きました。そして、初めて世界人口が80億人を超えました。

社会の授業では、今年2023年に初めて世界の人口が80億人を超えたこと、今年インドが中国を抜いたこと、両国の人口は14億人を超えていることを伝えました。また、世界第3位はアメリカで3億人を超えていることも覚えるように言いました。また、GDP(国内総生産)については、アメリカ、中国、日本の次はドイツで、インドがイギリスを抜いて世界5位になっていることも参考として話しました。(データはIMF)

私自身は19年間のビジネス経験があり、学生時代の友人たちは日本経済の第一線で活躍しているので、今でも経済の動きはウォッチし続けています。また、ビジネスや観光で約30ヶ国に行ったことがあります。私の話の中には学校の先生とは異なる内容も含まれているようで、興味を持って話を聞いてくれる生徒さんもいます。

夏期講習後半の社会は歴史になります。歴史の流れについて自分なりに解説するつもりです。また、歴史小説で読んだ興味深い内容を紹介する予定です。地理や歴史を勉強することは今の日本や世界を理解する上で重要であることを生徒の皆さんに伝えたいと思っています。

夏期講習・数学の特訓

今月の中3クラスは夏期講習を見据えた内容になっています。普段の授業は英語・数学・国語200字作文ですが、夏期講習では国語読解・理科・社会も勉強します。6月末の期末テスト、今月初めの模試の後は、夏期講習に上手くつながるように授業を進めてきました。社会の授業は既に実施し、今週末からは1回3時間の夏期講習本番が始まります。

サミット・ゼミの夏期講習の特徴は数学です。英語・理科・社会は1, 2年分野の総復習、国語は評論と小説の読解練習という一般的な内容ですが、数学は3つの分野に絞って徹底的に練習します。その3つの分野とは8月末の模試から毎回必ず出題される方程式応用問題、1次関数と三角形の合同の証明です。これらの分野に強くなれば模試や統一テストの数学の得点は安定します。数学は失敗し易い科目なので、重要分野の強化は戦略的に重要です。

今年の数学はこれまでの授業の流れにより方程式応用問題から始まりました。7/2の模試の後、半月かけて問題を解いてきました。授業内に解くだけではなく宿題のプリントもありましたから、生徒の皆さんは多様な問題に慣れたはずです。模試の問題の難度をやや超えるレベルの問題もありましたからかなりの実力をつけたことでしょう。方程式応用問題はほぼ終えたので、今週後半からは1次関数です。

毎年3月の公立高校入試の数学では、方程式応用問題、1次関数・2次関数融合問題、三角形の合同または相似の証明問題は必ず出題されています。夏期講習でのこれら3分野の特訓は必ず来年3月の公立高校入試につながるはずです。

速読練習の成果は?

7/2に行われた今年度最初の石川県総合模試の結果が出ました。中3クラス4名の英語の成績に期待していました。本年2/16付本欄「新たな試み」で述べた通り、従来は中3の夏期講習後半から始めていた英文の速読練習を今年は2月から始めました。模試過去問の長文問題を使って7/2模試までに8回練習してきました。

結果はまあまあでした。模試の英語の平均点は49.0点でした。89点という好成績を収めた人もいましたが、期待したほど得点できなかった人もいました。私の期待が甘かったのだと分析しています。7/2模試の問題は公立高校入試問題と同じ形式で、会話文・長文の問題文が長かったです。特に長文問題は解くのに時間を要する問題でした。8回程度の練習では全然足りないということだと思います。

今は素直に反省しています。速読練習を早めたことは悪くはありませんでした。回数が足りていなかったことに加えて、速読の練習の仕方についても見直さなければなりません。速読の基礎となる要素の一つは文法です。中3クラスは、模試の後は夏期講習体制に入り、文法の総復習を始めています。今日の中3クラスでは、夏休み中に文法を完全マスターするように話すつもりです。

文法の総復習と並行して速読練習も実施する予定です。設問を解くための読み方というポイントについても意識的に練習しなければなりません。次の模試は8/27で、そのすぐ後には各中学の実力テストがあります。それらのテストで速読練習の成果が確認できれば良いなと思っています。速読をマスターする当面の目標は11月の統一テストなので焦る必要はありません。

考え抜く

昨今、注目される活躍をしている日本人の若者と言えば、アメリカ大リーグ・エンジェルスの大谷翔平選手(29歳、昨日が誕生日)と将棋の藤井聡太七冠(20歳)が双璧でしょうか。彼らが進行形で成し遂げている偉業は「凄い」の一言です。

今週月曜日の日本経済新聞で、藤井七冠の師匠である杉本昌隆八段の写真が目に入りました。「創論」というオピニオン面です。「若手の能力 どう生かす」というテーマで、杉本八段が藤井七冠の育て方について述べていました。「自分の力で考え抜かせる」がキーセンテンスでした。杉本八段によれば、藤井七冠はよくAI(人工知能)時代の申し子のように言われるが、小さい頃から自分の力で考え抜いてきたことが今の強さの礎になっているとのこと。

常日頃から中高生の皆さんには考えることを強調しています。様々な知識と考える力の掛け算で人間の能力が決まるという小柴昌俊東大特別栄誉教授の指摘は的を射ていると思います。思考力は人間の能力を構成する重要な要素です。

藤井七冠の強さの源が「考える」を超える「考え抜く」であることは納得できます。生徒の皆さんに日経新聞の話をしても、藤井七冠は別世界の人と思うかもしれません。しかし、特に数学で、深く考えて難しい問題を解いた時の喜びを味わってもらうことを通じて考えることの重要性を実感してもらいたいと考えています。

目標点を確保する

中3生が受ける模試がいよいよ今週末(7/2)から始まります。来年3/6, 3/7の公立高校入試に向けて7月から来年2月まで毎月模試があります。中3の高校受験生が毎月模試を受けるのは多過ぎるように感じますが、とにかく今年も信頼性が高い石川県総合模試を団体受験します。どの高校に合格できるかは各中学の学年順位が1つの目安になりますが、学年全体のレベルは年によって変動することに注意が必要です。模試では県全体における成績レベルが客観的に分かりますから、合格可能性のデータはかなり信頼できます。

先日の授業の際、受験票を渡しました。初めての模試ですから皆さん緊張しているようです。今月8日付け本欄で述べた通り、中3の皆さんは今週から来週にかけて期末テスト、模試、実力テストが続いています。テストが続く中での初めての模試ですから精神的に結構キツイと思います。

当然のことながら、模試では実力が出るものです。ただし、数学は要注意です。実力があっても数学は失敗することがあるからです。前半のある問題で考え過ぎて時間がなくなり焦ってしまうと、計算ミスにつながり、本来解ける問題も解けなくなります。時々見かける現象です。

このリスクに対して、中3の皆さんには目標点を確保するように話しています。志望校毎に、この点数を取れれば大丈夫という目安があります。例えば、泉丘高校が志望校の場合、平均点が50点として80点取れればgoodです。75点がまあまあで、70点が確保すべき点数になります。70点ということは30点落としても良いことになります。1/3近くミスっても良いと思えれば、精神的にかなり楽になるはずです。

このように考えれば気持ちの余裕を持って数学の問題に臨めるはずですが、現実はそう簡単ではありません。そのために幾つかのテクニック的なアドバイスをしています。目標点を確保する意識を持って50分の総合問題練習を積み重ねることによって確実性が高くなっていきます。数学は怖いというメンタル的な要素があるので、彼らの気持ちを楽にするために、小さなミスは大丈夫と言っています。

どこまで言うか

高校クラスの皆さんとは全国模試の結果が戻ってきた時に、授業とは別に時間を取って、個別に30分ほど面談します。勉強法や進路についてじっくり話し合います。彼らの勉強に対するモチベーションに直結する大切な時間です。生徒の皆さんの自発性を高めて可能性を引き出そうとします。高1生、高2生との面談では特に問題はありませんが、高3生の場合、どこまで強く言うべきなのか、悩むことがあります。

過去の例ですが、11月にある高3生と面談しました。難関大学を目指すA君です。A君はその大学を高2になる頃から目指していました。それなりに勉強していましたが、合格水準には達しない状況がずっと続いていました。志望校を確認すると、その大学を答えました。センター試験(共通テスト)まで2ヶ月のタイミングでしたから、強く言わなければならないと思いました。言葉を選びながら、その大学に合格するための努力ができていないことを指摘しました。

A君の目に涙が浮かびました。頑張っていると思っているのに、私から厳しい言葉を聞いたからです。状況を分析してどうするべきか考えるように言って面談が終わり、彼は教室を出ました。私の心は重く苦しくなりました。彼が志望校に合格するためには強く言わなければならなかったにしても、涙を見ると、言い過ぎだったかもしれないと複雑な気持ちになります。

その日深夜に彼からLINEが入りました。自分では頑張っているつもりだったものの、甘さがあったという反省の内容でした。目標をしっかり持ち、それに見合う努力をしたいとのことでした。LINEの最後には、面談ありがとうございました、と書いてありました。そのような連絡が入るとは思っていませんでしたから、驚くと同時にとても嬉しかったです。

結果的にA君は、当初目指していた大学ではないものの十分満足できる大学に合格しました。合格発表直後に、震える声で合格を報告する電話をくれました。どこまで強く言うかは難しい判断ですが、厳しい言葉を言えるような人間関係を日ごろから築いておくことが非常に重要だと考えています。

中2の1学期、中間テスト英語

先月末の中間テストで、2年生の英語の学年平均点が47点だった中学があります。1学期の中間テストは一年で一番易しいテストという印象がありますが、2021年度から教科書が新しくなり、英語においては状況が変わりました。特に、金沢市立の中学校が採用しているNew Horizon 2は最初の単元(Unit 1)が難しいです。

Unit 1では先ず、be going to とwillの未来形を習います。問題はその後に習う2つの構文です。基本文は”I will show you the Merlion.”(私はあなたにマーライオンを見せます。)と”People call it the Singapore Flyer.”(人々はそれをシンガポールフライヤーと呼びます。)です。前者は主語・動詞・目的語・目的語(SVOO)、後者は主語・動詞・目的語・補語(SVOC)の構文です。英語には文型が5つあり、それらは第4文型、第5文型と呼ばれる複雑な構文です。

上記のSVOOとSVOCの構文では、動詞の後ろに2つの言葉が並びます。動詞の後ろに2つの言葉が並ぶこと自体が複雑ですし、それら2つの違いをきっちり理解することは易しくありません。さらに、学年平均点が低かった中学の試験範囲にはUnit 2の一部も含まれていました。この単元ではwhenやifの接続詞を習います。接続詞も最初は理解し辛いので、平均点を下げた要因だと思います。

New Horizon 2の教科書には文法のまとめのページがあり、「5つの文構造」というタイトルで5文型を説明しています。初めてそのページを見た時にちょっと驚きました。主語、動詞、目的語、補語をそれぞれS, V, O, Cと表しています。文法の説明としては当然の用語ですが、中2生にとっては難しいと思います。果たして学校の先生方はSVOCという用語を使っているでしょうか。英語の授業が分かりづらくなるかもしれません。

因みに、サミット・ゼミでは、新しい教科書に替わったことを受けて中2からSVOCという用語を使っています。当然のことながら、最初は生徒の皆さんは戸惑います。それでも繰り返し使うことによりだんだん慣れていきます。中3の最初に5文型をしっかり説明した後は普通にSVOCを使っています。

高校受験生の初夏

中3クラスでは、先月末に行われた中間テストの結果が戻ってきました。答案用紙を見ながら、個別に面談しています。科目間のバランスや志望校について対話します。

高校受験生の彼らは、来週末に部活動の県大会予選があり、その後今月末から来月初めにかけて試練の時を過ごすことになります。期末テスト、模試、実力テストの3つの試験が続くからです。ほぼ一週間の間に3つのテストを受けるのは精神的にも結構辛いと思います。しかも、模試は今年度初めての受験ですからかなり緊張することでしょう。

中間テスト後の授業内容をいろいろ工夫しています。期末テスト対策としての教科書の復習、模試過去問練習、実力テスト対策としての1, 2年分野の復習を上手く組み合わせなければなりません。3つのテストの日程を踏まえて、今月の授業内容の予定を立てました。期末テストの試験範囲によっては修正する必要が出てくるかもしれません。臨機応変に対応します。

中3生は11月末から12月初旬にも期末テスト、実力テストと模試が続きます。高校受験を終えた受験生に聞くと、初冬の3連続テストの時期が一番辛かったという人がいます。ですから、今月末からの3連続テストも高校受験生にとって大きなプレッシャーです。効果的な授業を進めるだけではなく、気持ちが前向きになるような話をして彼らをサポートするつもりです。

AI時代の勉強

AIの時代にはどんな勉強が必要なのでしょか。チャットGPTのような生成AIが様々なことを教えてくれるので知識の暗記は不要になるのでしょうか。

チャットGPTに、人間が生成AIに勝る点を尋ねてみました。経験、感性、社会性などと共に創造性を挙げました。人間は新しいアイデアを考え出し問題を解決することができると回答しました。それに対して、AIは学習したデータに基づいて回答するので新しいアイデアを考え出すのが難しい場合があるとのこと。

大きなポイントの一つはこの創造性だと思います。それでは、人間が創造性を発揮するためにはどうすれば良いのでしょうか。この点については、2002年にノーベル物理学賞を受賞された東京大学特別栄誉教授の小柴昌俊先生の指摘が適切な回答になります。すなわち、知識と考える力の掛け算で人間の能力が決まるということです。

アイデアは真っ白なキャンバスから突然湧き出るものではなく、様々な要素の新しい結びつきからもたらされます。創造力とは情報を組み合わせて問題を解決し、新しい価値を生み出す力です。知識と考える力の掛け算により創造性が発揮され、新たなアイデアが湧くのです。

AI時代にはプログラミングや情報処理のような新たな分野の勉強も必要ですが、勉強の基本は変わらないと思います。これまでと同様、様々な知識を蓄積し、しっかり考えることが必要です。様々な知識がなければ、前々回の本欄でご紹介したチャットGPTのミス(坂本龍馬が長州藩出身という間違い)を見抜くことはできません。AIをツールとして使いこなすために知識を蓄積し、思考力を磨かなければなりません。

大学新入生のTOEIC

今春、サミット・ゼミからは4人の生徒さんが大学に進みました。その4人に、英語の資格試験について尋ねてみました。2人はTOEICを受け、1人はTOEFLを受けていました。近年は、入学前後にTOEICを強制受験させる大学が増えてきています。TOEFLは海外に留学する人たちが受けるテストです。TOEICは英語によるコミュニケーションだけではなくビジネス能力を検定する側面があるので、お茶の水女子大はTOEFLにしたのかもしれません。

厳しい大学受験を終えて入学して直ぐに、社会人の英語資格試験であるTOEICを受験するのは新入生にとって大変です。しかし、多くの企業がTOEICスコアを採用や昇進の基準にしているので、新入生がこの試験を受ける意義は小さくありません。英語の資格は就活における重要な条件の一つだからです。

企業が求めるTOEICスコアについて調べてみました。因みに、TOEICは990点満点で、860点以上がAレベル、730点以上がBレベルです。採用条件として、600点以上が大正製薬、大和ハウス工業、ニトリホールディングスなど、650点以上がアサヒビール、シチズンなど、700点以上がNTT東日本、ファーストリテイリング、三菱電機など、730点以上がソフトバンク、武田薬品などでした。昇格・昇進については、住友商事は730点以上が管理職、三菱商事は750点以上が課長クラスの条件になっています。ハイスコアを求める企業もありました。住友不動産や野村不動産は採用条件として800点以上、NTTコミュニケーションズの採用条件は860点以上です。

これまでの私の経験では、東京外国語大学合格レベルのTOEICスコアは700-730点です。ですから企業が求めるTOEICスコアはかなり厳しいと思います。しかし、グローバル化が進展している世の中ですから厳しいのも当然と言えます。

TOEICにはリスニングセクションとリーディングセクションがあり各495点満点です。リーディングセクションは短文穴埋め問題、長文穴埋め問題と文章問題から構成されています。穴埋め問題には文法・語法力が必要で、文章問題には情報処理力が必要です。高校生が大学入試を目指して勉強すれば、結果的にTOEICでかなりの得点が取れると思います。文章問題は共通テストの第1問、第2問によく似ています。

懸念されるのは穴埋め問題です。共通テストは全ての問題が読解問題になり、センター試験第2問で出題されていた文法・語法問題は出題されなくなりました。共通テストでは出題されないからと文法・語法の勉強が甘くなれば、TOEICの穴埋め問題が解けなくなります。文法・語法は語学の勉強の基本ですから、ゼミの授業では、TOEIC受験も念頭に入れて文法・語法をしっかり教えるつもりです。

生成AI

金沢市と富山市で開催されていた主要7カ国(G7)教育相会合が今週月曜日(5/15)に閉幕しました。閣僚宣言では生成AIに対して「学習や指導に好機をもたらすと同時に、教育システムに課題を提示していることを認識する」と明記しました。イギリスのキーガン教育相は「生成AIを使いこなす力を伸ばすような教育と、ネガティブな面をコントロールすることの両方が大事だ」と語ったそうです。

先週の本欄を準備するに当たり、チャットGPTでいろいろ使ってみました。「どうしたら英語が話せるようになりますか」という問いに対しては、基礎的な文法や語彙を学ぶ、聴解力を鍛える、会話の練習をする、英語の環境を作る、自信を持って話すという5つのステップを答えました。完璧です! ゴルフスイングの悩みについての質問には納得できるポイントを助言してくれました。本当に便利だと思いました。

一方、ビックリしたこともありました。坂本龍馬に関する細かな質問をしたところ、龍馬を長州藩の志士と説明しました。龍馬は土佐藩出身ですから明らかな間違いです。チャットGPTを使い始めた日にこのミスを見つけました。チャットGPTは大量のデータを学習しているはずなので、このミスには驚きました。そこで、何故ミスをするのかを尋ねました。学習しているデータに、情報の正確性や完全性に欠けるものが含まれているとミスをする可能性があるという回答でした。

AIはツールとして凄まじい能力を持っています。しかし、完全無欠ではなく、上述のようにミスをすることもあります。そのようなミスに気づけるかどうかは人間にとって非常に重要です。ですから、人間は従来通り然るべき知識を持つ必要があります。最近の教育は知識の蓄積ではなく思考力、表現力を重視する傾向がありますが、AI時代においてはどのレベルの知識が必要とされるでしょうか。今後、私なりに考えてみるつもりです。